佐野海舟、地元高校全滅から鳥取の奨学金で拾われた軌跡
国際Aマッチウィーク中の10月2日、マインツ公式が佐野海舟の長いインタビュー記事を掲載した。山道の通学路から鹿島・町田を経てブンデスリーガに至るまでの道のりを、本人が振り返っている。中心にあるのは、地元岡山県の高校すべてに断られ、隣の鳥取県の高校に奨学金付きで拾われたという経緯だ。
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地元で全滅、隣県の奨学金で拾われた
記事はまず、岡山県津山市での少年時代から始まる。「岡山」の字が「丘」と「山」からなり、地元・津山にも「山」の字が入っていることに触れたうえで、佐野はこう語っている。
Wir haben sehr ländlich gelebt, und ich habe mich dort sehr wohlgefühlt. Nachteile habe ich nie gespürt, und ein Stück weit vermisse ich es auch. Deshalb war dieser Schulweg über Bergwege und Felder für mich nichts Besonderes, sondern eine Selbstverständlichkeit.
(とても田舎で暮らしていて、居心地はとても良かった。不便を感じたことは一度もなく、今でも少し恋しいくらいだ。だから山道と畑を抜けるあの通学路は、自分にとって特別なことではなく、当たり前のことだった。)
弟の佐野航大(現PSVアイントホーフェン)と2人で片道2時間近く歩いていたことにも触れ、なぜ電車やバスを使わなかったのかという問いにはこう答えている。
Irgendwo habe ich mal eine Bushaltestelle gesehen, aber einen Bus habe ich dort fast nie halten sehen. Ich habe nie darüber nachgedacht, zur Schule zu fahren. Und ehrlich gesagt hat das Laufen mit meinem Bruder viel mehr Spaß gemacht.
(どこかにバス停を見た記憶はあるが、そこにバスが止まるのはほとんど見たことがない。学校に通うのに乗り物を使うという発想自体、浮かんだことがなかった。それに正直、兄弟で歩くほうがずっと楽しかった。)
兄弟の関係について、佐野はこう続ける。
Wir pushen uns gegenseitig, vor allem fußballerisch, und tauschen uns dahingehend regelmäßig aus.
(お互いに刺激し合っている。特にサッカーの面で、定期的に情報交換もしている。)
高校進学では、地元・岡山県内の有力校すべてから断られたという。最後の手段として隣県・鳥取の米子北高校のセレクションを受け、奨学金付きで合格した。
Dafür bin ich der Schule heute noch dankbar.
(そのことについて、今でもあの学校には感謝している。)
In jeder Trainingseinheit wurden mir meine Stärken, aber auch meine Schwächen vor Augen geführt. Ich wurde angetrieben, immer die Herausforderung zu suchen und keine Angst vor Fehlern zu haben. Das hat mich in meiner Entwicklung sehr weitergebracht, diese Denkweise habe ich bis heute beibehalten.
(練習のたびに、自分の長所も短所も突きつけられた。常に挑戦を求め、ミスを恐れないよう後押しされた。それが自分の成長を大きく進め、この考え方は今でも持ち続けている。)
町田ゼルビア・鹿島アントラーズを経て2024年にマインツへ加入した当初は、プレーのテンポの違いに苦労したというが、チームの空気にはすぐ馴染めたとも語っている。
Ich habe direkt gespürt, dass die Mannschaft stets im Vordergrund steht. Jeder spielt für das Team und alles wird sehr ernst genommen. Das war in Japan nicht anders und ich konnte deshalb diesen Spirit relativ schnell aufnehmen und mich voll und ganz auf den Fußball konzentrieren.
(チームが常に最優先されるのだと直接感じ取った。誰もがチームのためにプレーし、すべてが真剣に扱われている。それは日本でも同じだったから、このスピリットは比較的早く吸収でき、サッカーに全てを集中させられた。)
サッカー以外の話題では、幼少期にもう一つの選択肢として野球があったことも明かしている。
Natürlich Baseball.
(もちろん野球だ。)
同じ岡山県出身の大谷翔平・山本由伸(ともにロサンゼルス・ドジャース)を今も追いかけているという。今季ここまでの成績については、クラブ公式が「4試合で2アシスト」と記している。代表活動については、こう語った。
Die Lehren aus der Weltmeisterschaft gilt es jetzt Schritt für Schritt aufzuarbeiten. In den kommenden Testspielen wollen wir diesen Fortschritt als Mannschaft zeigen und bestätigen. Unser Ziel ist es, nachhaltig wieder eine starke Mannschaft aufzubauen, um im kommenden Jahr bei der Asienmeisterschaft und in vier Jahren bei der Weltmeisterschaft zu überzeugen.
(ワールドカップで得た教訓を、今は一歩ずつ消化していく段階だ。これからの親善試合で、チームとしてのその進歩を示し、裏付けたい。目標は、来年のアジアカップ、そして4年後のワールドカップで結果を出せるような強いチームを持続的に作り直すことだ。)
出典: Kaishu Sano: Vom “Hügelberg” in die Bundesliga(マインツ05公式、2026年10月2日16:30)
「基準未達の4試合」は数字の上で消えた
去年9月、マインツ加入直後を振り返って、佐野は同じクラブ公式のインタビューでこう語っていた。
Anfangs hatte ich auch vier, fünf Spiele, die nicht meinem Standard gerecht wurden.
(最初は自分の基準に達しない試合が4つか5つあった。)
今回のインタビューでクラブ公式が添えた今季の成績は「4試合で2アシスト」。同じ「4試合」という単位が、1年前は基準に届かなかった試合の数として、今年は結果を出した試合の数として出てくる。偶然の符合ではあるが、本人の口から出た同じ数字が、意味を反転させて戻ってきている。
この変化は、インタビューの中の別の一言ともつながる。加入当初に苦労したのは「プレーのテンポ」という技術的な部分であって、「チームが常に優先される」という空気そのものには直後から馴染めたと佐野は言う。不合格を重ねた末に米子北高校で叩き込まれた「常に挑戦を求め、ミスを恐れない」という考え方が、技術面の遅れを埋める期間を短くした一因と見てよさそうだ。これは本人もクラブも明言していない、当サイトとしての見方にとどまる。
弟の航大もオランダのPSVでチャンピオンズリーグを戦う主力に育っており(CL初陣の記事)、地元の高校という最初の関門ではじかれた兄弟が、2人ともヨーロッパ1部リーグの中心選手になっている。奨学金で拾われた高校時代の話を、本人が「今でも感謝している」と振り返るのも、その後の軌跡を踏まえれば説得力を増す。
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